プレミアム インタビュー

The Last of Us Part II

これほどまでに心を左右された作品はありません。

清塚信也

ピアニスト

5歳よりクラシックピアノの英才教育を受ける。
中村紘子、加藤伸佳、セルゲイ・ドレンスキーに師事。国内外のコンクールで数々の賞を受賞。
近年では、TVバラエティ番組やラジオ番組へ出演するなど、マルチピアニストとして活躍。
2019年8月16日には邦人男性クラシック・ピアニストとしては史上初となる日本武道館での単独公演を開催。同年、第70回NHK紅白歌合戦に「糸」(島津亜矢と共演)で初出演。
公式HP→http://tristone.co.jp/kiyozuka/

―前作をプレイした感想について

ジョエルに感情移入してプレイしていました。
ジョエルのとる行動、選択、言葉、全てに共感して、没頭してプレイしたのを憶えています。
物語が進むうちに、複雑化していく人間関係が、不思議とシンプルになっていく感じがしました。

ゲーム全体の操作感が非常にリアルで、エイムする感触、急いでドアを開ける感触、敵を前に潜む感触など、まるで生身の感触を体感しているかのようでした。それが物語やキャラクターへの没入感を生むのを助け、感触として「新しいゲームだ」と思いました。

―主人公:エリーの印象について

境遇が境遇だけに、大人になり過ぎているところと、全く子供のままなところとが共存しているように感じました。
大人な部分でジョエルのパートナー、子供な部分で娘となっているように感じ、ジョエルに不足している部分を唯一埋められる存在だと思いました。大人と子供、男と女、優しさと厳しさ、そういう人間のカテゴライズのようなものを超えて、全てが集約しているような存在だと感じます。

時に利己的に感じる事もあるかもしれませんが、最後までやってみると、総じてエリーがこの世界を象徴する存在だと感じました。それは「生きる」ということを最優先にしているからです。

そして、エリーにとって「生きる」ということは、ただ生きるのではなく、生きることにアイデンティティを持ち、生きた証を感じるという事だとも思います。
そういう意味で、『The Last of Us Part II』のもう1人の主役と言っても過言ではない、あるキャラクターと共通点があると思いました。

―お薦めのシーンや印象的なキャラクターは?

前作では、エリーがジョエルと車に乗っているシーンと、2人でキリンを触るシーンです。
ジョエルが少しずつ「大切なものを作る怖さ」から解放されていく様子を観てとれ、嬉しかったのを憶えています。

あとは終盤、マーリーンがジョエルに命乞いをするところです。あそこが、私としてはこの世界を全て象徴している気がしました。大義や世界のために動いているかのようでしたが、結局は自分が生きることが正義なのだと、そう感じました。
それは排他的な意味ではなく、健全ですらあるように思えました。多くの人が絡む正義を考えると、がんじがらめになって矛盾やジレンマが生まれ、綺麗事のように思えてきます。
なので、シンプルに「各々が自分を大切にする」ということが正義なのだと感じました。

『The Last of Us Part II』では、エリーの表情に本当に心を揺さぶられます。
ゲームのムービーでこんなに生身のように思えたのは初めてでした。
そして、驚くことに、ムービーだけでなくステルスキルをした時の表情など、ゲーム中全ての表情から感情がリアルに伝わってきました。
そして、もう1人の主役と言えるキャラクターとのムービーシーンでは、セリフと共に表情で多くを語ります。本当に優れた表現だと思いました。

キャラクターでいうと、ジョエルの弟トミーが今回とてもかっこよかったです。その他にもジェシーや、敵側の男性陣など、かっこいい人が多かったです。

しかし、やはり私はずっとジョエルに感情移入していました。

―より『The Last of Us Part II』を楽しむために何かオススメしたいことはありますか?

ヘッドホンは絶対にした方がいいと思います。
音楽家からしても本当に良い音ばかりで、音楽や楽器の音はもちろんのこと、銃声や銃をテーブルに置く音など、全ての効果音が本当に心地よい素晴らしい音でした。
ギターの音なんて「どうやったらこんなに演奏ノイズまで美しく録れるのだろう」と音楽家ながら不思議に思ってしまうくらい美しくバランスのとれているものでした。

当然、感染者から発せられる音や不意に撃たれた時の銃声などは、飛び上がるくらい怖いリアルなものでした。感染者の奇声なども指向性があり、よりリアルに感じられると思います。
そして、なんといっても今作は「息遣い」が凄かったです。

敵がいて走っている時の息遣いや、潜んでいる時の息遣い、割とリラックスできている時の息遣いなど、常に聞こえてきます。それが本当に臨場感を出しています。これはぜひ耳元で感じて欲しいです。

―今回の”旅”を見届けて頂きましたが、「復讐」というテーマ、愛するものを傷つけられたとき、人はどこまでのことができるのかということについて、どのように感じられましたか?

復讐というか、生きる理由のようにも感じました。
そして、残されたものや愛するべき人のためにも、「清算しておかなくてはならない」という側面もあるような気がしました。そして、中盤以降、復讐というより、生き残るということが、唯一の「正義」と感じるようになってくる自分がいました。

―グラフィックや世界観、ストーリー体験をより深いものにするゲームシステムなどについていかがでしたか?

物をとる仕草や飛び降りたり梯子を登ったりする仕草に、本当の人間の動作を感じました。
けして無敵のスーパーヒーローなわけではなく、あくまで「生身」というこの世界ではいささか無防備な生命体という感覚があって、物語をリアルに、そして緊張させてくれました。

そして、前述しましたが、息遣いの音です。これが本当に凄かった。シチュエーションに応じて呼吸が変わる。本当に自分が呼吸しているかのようでした。

次に、今作ではL1ボタンで「避ける」というコントロールが出来るようになりました。これにより、シビアで緊張感のある戦闘にバリエーションが出来ました。それが余裕を生むというわけではなく、新たな緊張感を生むといった感じで、絶妙でした。

あとは、人間の恐ろしさです。
中盤あたりで、私は感染者より人間の方が圧倒的に怖く感じました。今作では敵側にもチーム愛があり、仲間がやられると名前を呼んで悔しがります。その感情こそが怖いのです。敵が何かを考えているということが、これほど恐ろしいのだと感じさせられました。

―この作品を一言でいうと?

愛です。
正義はもはや解釈していく意味がない気がしました。ですので、愛しているか、というシンプルな自問自答だけが強い確かなものになっている気がしました。

―これから遊ぶみなさんへメッセージをお願いします。

生きる力を与えてくれる作品でした。

自分を大切にすること、その大切さを私は思い出しました。自分の意志を強く持つことが、人と違ったって恥ずかしいことじゃない、と自信のようなものが漲ってきました。それと同時に、人の考えや言動を、簡単に非難や否定をしてはいけないと改めて思いました。今の社会に、とても必要な意識ばかりではないでしょうか。

そして、これほどまでに心を左右された作品はありません。
自分が一体誰に感情移入しているのか分からなくなります。それほど巧みに心理を操られます。未だかつて、ゲーム歴の長い私でも、こんなに一筋縄でいかない、複雑な気持ちの攻撃ボタンを押したことはなかったです。

©2020 Sony Interactive Entertainment LLC. Created and developed by Naughty Dog, LLC.

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